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2020.12.10
【南川コラム】前十字靭帯損傷の原因と治療法
スポーツ膝障害の中でも頻度が高く、スポーツを行っていれば誰もがなり得る外傷の前十字靭帯損傷。
受傷すると完治までに時間がかかるといわれています。今回は、その前十字靭帯の原因や、治療について解説します。
膝前十字靭帯とは?

膝の関節を構成する大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ靭帯の一つです。骨同士を連結させ、脛骨が前にズレたり、回旋し過ぎないように膝の動きを正しい方向へ誘導する役割を持っています。
膝前十字靭帯損傷はどうして起こるの?
〜受傷原因には大きく分けて 2 タイプ〜

【非接触型】
ジャンプの踏み切りや着地の時。あるいは急な方向転換の時に膝を捻って損傷するタイプです。特にバスケットボールやバレーボール、サッカー、器械体操などのスポーツにみられる怪我です。

【接触型】
タックルやスライディング、クロスプレーなどの接触プレーの時に、膝に対して直接外力が加わることで、強制的に膝が捻れ靭帯を損傷するタイプです。特に柔道やラグビー、サッカー、アメリカンフットボールなどの接触プレーが多いスポーツにみられる怪我です。
どんな症状が出るの?
・膝が腫れて熱をもつ
・膝に力が入らない
・膝が完全に伸びない、曲げにくい
・膝がグラグラして、不安定感がある
どんな治療法があるの?
損傷した前十字靭帯は、自然治癒力にかけるため、元通りにはなりません。そのため、膝がグラグラするなどの不安定感が残ってしまいます。不安定感が長い間続くと、変形性膝関節症へ進行する可能性が高くなるため手術をお勧めします。
保存療法

高齢者や手術を希望されない方に対して、サポーターや筋力強化、膝関節の動きの改善を行っていきます。
しかし、靭帯機能の改善は望めないため、徐々に変形性膝関節症へ進行する可能性が高くなります。スポーツをされる方はもちろん、高齢者でなければスポーツをされない方でも将来的な変形性膝関節症の発現と進行を予防する目的で手術を勧めます。
手術療法
スポーツをしているのか、年齢、前十字靭帯以外にケガをしているところはないか、などをふまえて手術(前十字靭帯再建術)を考えていきます。実際の手術については下記の通りです。当院では患者様の状態に応じて2つの手術方法から選択します。

【半腱様筋腱&薄筋腱 (STG)】
ハムストリング(太ももの裏にある筋肉)の半腱様筋腱&薄筋腱を採取し、前十字靭帯の代用として移植する方法です。
※半腱様筋腱&薄筋腱:semi tendinosus and gracilis tendons (STG)

【骨付き膝蓋腱 (BTB)】
膝蓋骨・膝蓋腱・脛骨から一部を採取したものを前十字靭帯の代用として移植する方法です。 ※骨付き膝蓋腱:Bone Tendon BoneQ&A(患者様からよくある質問)
手術後、どれくらいでスポーツをできますか?
9ヶ月〜1年程でスポーツ復帰が可能です。
手術後、どのくらいで歩けるようになりますか?
手術後は、2週間程で歩けるようになります。
その後、3ヶ月程でジョギングも可能になります。
手術はしなくても大丈夫ですか?
前十字靭帯を損傷して手術をしない場合、膝の不安定感が残ります。
そのため、変形性膝関節症などの二次障害へ移行します。
手術をした場合、入院期間はどのくらいですか?
前十字靭帯単独での損傷の場合は2週間、半月板損傷を伴っている場合は3週間必要です。
コラム監修

【記事監修】市村竜治 医師
【専門】膝関節外科・人工関節・外傷
【資格】
日本整形外科学会 専門医
日本人工関節学会 認定医
日本DMAT医師